ぉもしろかった。すごく斬新でした。
一人称の文体。書き手は「わたし」。そして「わたし」は死んでいる。
「・・・え。えええええ?」って感じでした。
物語の序章で主人公が死ぬ、という構成のお話は珍しくないと思います。
序章で死んで、以降は時間的に遡ったところから死に至るまでがつづられていく、というものは読んだことがある。ありふれている。
だけどこれは違いました。
主人公の死後も、主人公視点で、他の登場人物たちの行動が淡々とつづられていく。
主人公が幽霊になってうろうろふわふわしながらいろんなことを見聞きしている、っていうのでもない。
こんなの初めて。わんだふる。
構成・手法の斬新さだけではなく、田舎の空気や人々の生活感の描写もすごく良いです。情景をありありと想像することができます。
それに比べると、人物の心理描写は「わたし」を筆頭にひたすら淡々としています。
「わたし」こと五月ちゃん、殺人者である弥生ちゃん、その兄であり五月ちゃんの想い人であり死体遺棄の主計画・実行者である健君。
どのキャラクターに対しても偏った思い入れは持たなかったし、この「物語」に切り出されているエピソード以外には背景を何も感じなかった。すごくキャラクターが「薄い」。感情移入しようがない。
こんな風にいうとマイナス評価みたいだけど、ちがいます。
人物描写の希薄さが「作品」をより完璧にしているんじゃないかと思うんです。
この作品には続編も外伝もエピソード0も要らない。これで完成・パーフェクトなんですよ。
えくせれんと。
いいもん読ませていただきました。